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第113回卒業証書授与式を行いました。

朝方までの雨がやみ、青空が広がり太陽が暖かな日差しを注いでくれる佳き日になりました。卒業式にはありがたい日和です。

第113回卒業証書授与式を挙行しました。

コロナ対策として各家庭からは1名の参加、在校生は参加しないという方針です。そのため、会場から式の様子をYouTubeLiveで配信しました。

コロナ禍ではあるけれど、生徒の顔はみな輝いていました。このような困難な世界に向けて、力強く船出をしていきました。幸あれと祈ります!

校長式辞

 厳しい寒さがようやく終わり、春の光あふれるこの佳き日に、名古屋経済大学市邨高等学校第113回卒業証書授与式を挙行し、卒業生480名を社会に送り出すことができることはこの上ない喜びであります。
 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様に心よりお祝いを申し上げます。
 コロナ禍の卒業式は3回目となり、未だにコロナウイルス感染症は終息しておりません。社会生活に大きな制限がかかる中、学校教育においても厳しい制約を受けています。 今年は、限定的ではありますが、ようやく保護者の方々にも式にご列席いただきくことができました。在校生の見送りがないのは残念です。
 2年前に突如出現したコロナウイルスによって世界は大きく変わりました。21世紀になって20年が過ぎ、世界の枠組みがさまざまな綻びを見せていたところに、コロナははっきりと古い時代の終わりを告げる役割を果たしたと思います。
 そして2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻によって第2次世界大戦後 世界が作り上げてきた世界秩序の枠組みが崩れ始めました。私たちは、今の自分がよって立つ基本的な常識、それは、現在の世界の体制が保たれるのはあたりまえ、この平和はいつまでも続くだろうという常識ですが、戦争という暴力によってもろくも崩れ去ることに唖然とし、呆然としています。突然の戦争開始に対して世界中の市民はただ茫然としているだけでなく、人々の命と財産を奪う軍事行動に対して人道的な抗議の声を上げなければならないと考えますが、何故、どのようにして戦争に至ったのかを歴史的な観点から探り、検証し、我々の未来に対する脅威をどのように回避することができるのかを、各々が自分で考えるよう迫られているのだと思います。正しい歴史認識がなければ今起きていることの意味を理解できず、これからの世界をどう生きればいいのかもわからなくなります。あなた方がこれまで学校で学んできたのは、このような事態をもきちんと受け止め、自分の意見を持つという、まさに未来を切り拓く力を持つためです。あなた方は世界史を学び、時事問題で意見を述べあい、国語で言葉での表現を身につけ、英語でコミュニケーションすることで異国の文化を理解し、情報について学び、世界で起きていることを瞬時に知るテクノロジーを習得してきたのです。これまで学んで修得した力が、単に入学試験の為でなく、未来を切り拓いて生きる力であるのかどうか、自ら検証してみてください。18歳になったあなたはこの4月から成人です。大人としての自立が求められています。
 コロナの蔓延で世界は繋がっていることを実感しました。今回のウクライナ侵攻も我々日本の経済や政治に直結していることは明らかです。はっきりしていることは、世界は我々のすぐ側にあり、我々が信じているほど、安定していないということです。君たちが入学するときのパンフレットに「2030年の未来が見えますか」というキャッチコピーを載せました。その時は、「テクノロジーの発展と経済産業構造が大きく変化する中で現代の高校生はどう生きるか考えよう」と呼びかけるものだったのですが、この2年間に起きた世界の変化の中では、「君たちは、より能動的に(activeに)自分の未来を切り拓いて生きなければならない」という呼びかけに変わったと思います。未来は過去の延長上にはない、誰もこれから先のことを教えることはできない、未来を担う若者は自分という視点を持って、自分の力で未来を創り出さなければならないということです。
 ただ、未来への展望は悲観的なことことばかりではありません。未来を自分の力で変えようという動きが社会の中に生まれてきています。SDGsを進める運動が企業や政府やマスコミや学校など社会全体で取り組まれています。ゼロカーボン社会の実現に向けて運動が広がり始めました。持続可能な社会を作らないと我々に未来はない、ということがただの理念や一部の人の運動ではなく、社会通念として理解され、取り組んで行こうという社会になってきたのです。私の考える学校の使命は、「多様性を積極的に認める社会、人間の尊厳を守る社会、そのような持続可能な社会を構成する人々を作る」というものです。
 市邨精神についてはこれまでも話をしてきました。「桜は桜、松は松たれ」という、多様性を認め、与えられた才能を自覚し努力せよという教え、「世界は我が市場ならずや」という、常に世界を視野に入れて判断し行動するというグローバルコンピテンスを養えという教え、そして「犠牲的精神」というのは、自ら楽しんで人のために尽くすということ、「終身教育」と呼んだのは、人世100年の現代にあって、生きている限り学び続けよという姿勢でした。まるで、SDGsにいうところの、17個の達成目標ではありませんか。
 このような市邨精神の下で育まれたあなたたちの学びは、北京オリンピックで失意の羽生結弦選手が試合後に述べた「報われない努力だったかもしれないけど、一生懸命に頑張ってきました」という言葉に通ずるものがあると思います。市邨での学びは、市邨芳樹先生が述べた「各自の天禀に適応し、精励以て特色を発揚し、而して無名の英雄たるに甘んぜよ。」という一節に込められています。市邨での学びは「自分自身だけが知る、かけがえのない努力」そのものだったと言えると思います。その価値はあなた方自身が最もよく理解しているところです。
今日、市邨での学びを胸に、誇りをもって巣立ってください。
 結びに、餞(はなむけ)の言葉を送ります。このような世界の秩序が危うくなった、まさに混沌とした時代にあっても通用する言葉です。
「起てよ、憤りを発せよ。有用の人たれ。活舞台に於いて活躍する活人物たれ。世界は我が市場ならずや」
令和四年三月二日
 名古屋経済大学市邨高等学校長  澁谷有人
この記事の筆者
校長 澁谷有人
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