好奇心は、誰もが生まれた時から持っています。幼い子は好奇心のかたまりです。
しかし、成長するにつれて次第に失くしていきます。生きるための知恵が、ふつふつとたぎる好奇心を抑えるようになります。市邨芳樹先生はこの様な若者を「化石的青年」と呼びました。
しかし、世界を変えることができるのは若者の好奇心です。「起てよ、憤りを発せよ」と100年前の青年に呼びかけてできたのが市邨学園です。翻って、10年後、20年後の世界の未来は君たちにかかっています。
今、学校は本気で変わらなければなりません。「好奇心にあふれ探究心を燃やす若者で一杯の学校を創ろう」というのが本校の方針です。
コロナ禍で大きな被害を受け混迷している今の世界は、これからどのようにして回復するのでしょうか。コロナ後の人間に未来はあるのでしょうか。
コロナ禍で学校はどうあらねばならないのか、正解を求めて一年を過ごしてきました。休校になっても、一人一台のiPadによってオンライン学習を続けることができました。リモートでホームルームを開き、個人面談も行い、学習は遅れることなく続けることができ、夏休みは例年通りでした。修学旅行や文化祭はじめほとんどの行事を実施しました。振り返ってみれば、ほぼ正解だったと思います。
しかしこの先は、同じようにはいかない、これまでの日本の教育が抱えてきた問題は一気に解決を迫られることになるでしょう。ICT教育の遅れよりも、知識の獲得を第一としてきた学校教育、いい成績を上げるための勉強をしてきた子どもたち、大学進学の成果を上げることを目指してきた進路指導など、諸々の学校の常識を見直さなけらばならない時期に来たのです。
2030年の未来に生きる若者は、「正解のない問題」を解く力が求められます。
そのために本校は、”TeachingからLearningへ”のスローガンを掲げて、知識を教えることよりも自分で学ぶことができる力を養います。
生徒に教え込むことは最小にして、生徒の好奇心を刺激し探究心を喚起する授業に変わります。生徒の学びの時間は授業だけではなく、寧ろ授業の外で学びは発展します。先生はとことん生徒に付き合い、一人ひとりに最適化した学びを実現するために、授業時間は縮減します。
それを可能にするのが、新しい4コースの設定です。文系や理系という区別をせず、社会の変化に対応できるカリキュラムとしました。
コースは設定する探求活動によって区分されます。ICT機器の活用は当たり前、生徒一人一台のiPadが学習ツールとして常に学びをサポートします。
そして、生徒の活動の記録は、全て「生徒カルテ」に書き込まれ、市邨ポートフォリオとして三年間蓄積されます。成長の記録として、自己評価の対象となり、自己分析することができます。
自己活動と評価の繰り返しによって、自らの意志と適性と獲得した能力を活かす進路が開かれます。キャリア教育と呼ばれる市邨の生涯教育(市邨先生は終身教育と呼びました)が始まるのです。
SDGsを学ぶことによって、人間の尊厳を第一として、価値観の多様性を理解し、世界の広がりを感じることができます。
100年前、当時の最先端教育である商業教育の先駆者であった市邨先生は、「道徳と経済は同じものであると」と云いました。経済活動は「まごころ」であると説いたのです。
今の日本に最も必要な言葉ではないかと思います。世界人として生きる若者を育てることが使命であるとした、市邨のグローバル人材の育成は、「世界は我が市場ならずや」の心意気で表されています。
全ては生徒の好奇心から始まります。豊富な体験活動の機会を経て、さまざまな事柄に興味を持つことから自らの学びが始まります。
学べば学ぶほど、わからないことが増え、さらに学びたいことが出てきます。そして、チャレンジが生まれ、人が変わる、それが市邨の学びです。市邨メソッドです。
いちむらでの学びが未来のあなたを創ります。
学校長 澁谷 有人(しぶや・ゆうじん)