日本科学技術振興財団の加藤太一先生をお招きして、高校2,3年生と中学3年生を対象とした放射線に関する出前授業を行いました。今年の2月に実施した内容を踏まえたアドバンス編です。(高校3年生はさらに進んだ内容を学びます。
出前授業の流れは次の6点です。
- 前回の内容の復習
- ドライアイスを用いた雲の発生
- 霧箱の作製
- 作製した霧箱に放射性物質を入れて観察
- 霧箱を使えば放射線の軌跡を見ることができる
- 放射線・放射能・放射性物質について正しく理解しよう
2月の基礎編では、放射線は「見えない」「におわない」「聞こえない」などのないない尽くしであることを学びました。また、霧箱を用いて自然放射線の観察を行いました。
今回は、その霧箱を生徒自身で1人1つ作製します。
最初に雲ができる仕組みについて考えます。(霧箱で放射線の軌跡を見ることができる仕組みに繋がります。)ドライアイスを水の中に入れると、雲が発生します。
実際に雲が発生する上空約1万メートルを飛ぶ飛行機で、「機外の温度は-64度」と表示されていたことを紹介します。雲の発生には水(水蒸気)と低い温度が関係しているということがわかります。砕いたドライアイスを勢いよく空中に撒くと、空気中に含まれる水蒸気が急激に冷やされ雲が発生しました。多くの生徒が驚き、拍手をしています。
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雲ができる仕組みについて理解したうえで、霧箱の作製に移ります。
黒色の紙を敷いたシャーレにスポンジを取り付け、エタノールを含ませます。
蓋をして中をエタノールで充満させてドライアイスで冷却します。(中は雲ができやすい状態になります。)
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理科では、対照実験の考え方がとても大切です。最初に霧箱の中には何も入れずに観察し、特に何も見えないことを確認してから、放射性物質であるモナズ石を入れて観察します。すると、飛行機雲のような放射線の軌跡を観察することができます。
続いて、モナズ石を取り出し、霧箱の中にラドンガスを注入します。再び十分に冷却されると放射線の軌跡をたくさん観察することができます。しかし、時間が経つにつれて、観察できる放射線の軌跡が減っていきます。しばらくすると、観察できなくなりました。
ここで放射性物質の半減期について学びます。最初はたくさん観察できていた放射線の軌跡が観察できなくなったのは、今回注入したラドンの半減期が約55秒なのが関係しています。
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最後に、「放射線は直接見ることはできないが、霧箱を用いて飛行機雲のように軌跡を観察することはできる。」ということや、ベクレルとシーベルト、内部被ばくと外部被ばくなどについて再確認しました。
今年の2月に実施した内容のアドバンス編として、生徒自身で霧箱を作製し、放射線の軌跡を観察することができました。理科といえば実験、生徒は楽しそうに手を動かし、積極的に放射線の軌跡をiPadで撮影をしていました。お世話になった皆様、ありがとうございました。