寒さが戻った感がありましたが、春の息吹を感じながら中学校第75回卒業証書授与式を行いました。
コロナ禍の開催ですので、各御家庭1名のみ参列していただくという制限を設けさせていただきました。御協力ありがとうございました。
校長式辞です。
日一日と春の暖かさを感じる季節になりました。本日、名古屋経済大学市邨中学校第75回卒業証書授与式を執り行うことを心よりうれしく思います。
未だにコロナ禍が終息しない現在、感染対策のために保護者 の皆様には制限を設けてご列席いただくことになりました。御協力ありがとうございます。万全の対策をもって式に臨みたいと思います。
卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また、この日を楽しみにしてこられた、ご家族の皆様に心よりお祝いを申し上げますとともに、この三年間のご支援とご協力に深く感謝申し上げます。
社会は激しく動いています。昨日までの常識が今日は覆されています。安全だったはずの日常が突然危険きわまりない不安定な世界に変わる現実を突きつけられています。
11年前の3月11日、突然の地震と津波に襲われ、原子力発電所がメルトダウンし、死者行方不明者合わせて2万2000人という多くの人命と財産が失われました。未だに復興は道半ばです。そして、2年前の冬、突如新型コロナウイルスが出現、瞬く間に世界中にまん延し、日本での感染者数は昨日までに540万人を超え、死者は2万5000人に達しています。そして未だに終息する気配を見せません。その様なとき、2月24日、北京オリンピックの終了まもなくロシアがウクライナに侵攻しました。第2次大戦後の世界平和の枠組みが壊されました。戦争を回避するための国際政治の仕組みは機能しませんでした。世界中でこの暴挙に抗議し、停戦を求める動きが国際政治の上でも市民の間でも活発になっています。
予測不可能な未来という表現をよく使います。それは、少子高齢化や温暖化やテクノロジーの発達により社会構造や環境が変化するという緩やかな危機が進行しているために、未来は 不安定で予想不可能だという意味でした。しかし、実はそれだけではなく、突然の大変動、破局、つまり地震や感染症の蔓延などの自然災害、戦争という人間同士の争いごとが未来を予測不可能にしています。
果たして2030年の未来は来るのか、2040年の未来に生きる若者は現在をどのように生きれば良いのか、未来を生きる君達若者に、いま求められているものは非常に大きいのです。先を見透すことの難しい社会で、君たちはどう生きるのか。9年間の義務教育を終えた皆さんは、社会のために大きな一歩を踏み出さなければならないことは確かです。
皆さんは、3年前に本校の門をくぐり、市邨生となりました。その時の不安な気持ちを覚えていますか。3年たった今、皆さんは見違えるように成長しました。たくましく、自分の主張をプレゼンする姿を、昨日の「Ichimura J.H Open Day」で見ることができました。この3年間で修得したICT技術を駆使して、3年間の学習の成果を発信していました。MIRAIゼミやLanguage Arts、総合的な学習の時間、修学旅行、体育祭、ダンスレッスン、部活動などで皆さんがよく楽しみ、よく学んだことがわかりました。これらが単なる楽しい思い出として残っているのではなく、皆さんの学力を高め、自信を深め、人格を磨くことに繋がっていることを確信しました。
特に修学旅行は、コロナのために実施が危ぶまれましたが、絶好のタイミングで沖縄に行くことができました。私も君たちと一緒に楽しい旅をしました。感染症対策のために観光は控え、自然体験としてのカヌー体験を行いました 。沖縄固有の自然と歴史と風土を自分の体験として感じ取る中で、戦争と平和について学び、考えている君たちを見ました。遥か彼方の海底火山の爆発で噴出した軽石に埋め尽くされた海岸を歩いたことは忘れられません。あの時感じた見知らぬモノへの好奇心と感動は、iPadで記録したデータと共に、君たちの心に一生残ると思います。
皆さんはこの3年間全国的にも最先端の学びを体験して来ました。コロナで臨時休校になってもオンラインで授業を行い、勉強を続けました。文房具としてiPadを使いこなし、充実したICT教育の環境を生かして、自分の頭で考え、自分を表現し、友達と協力して学び合うことができるようになりました。他の学校にはない学びが市邨にはあり、自分の成長を実感する中で、そのことがどれだけ貴重か自分で分かっています。
本校では自分で課題を見つけ、自分で考え、仲間と協力して解決するという学習方法が当たり前になっています。学ぶ機会は授業中だけではなく、部活動やダンスコンテストなど多くの学ぶ場がありました。イングリッシュキャンプや、学校から出かけていった海や川や施設、あるいは家でもどこでも勉強ができることを皆さんは知っています。そしてそこにはいつも文房具としてiPadがありました。そこで見つけたのは、自分の頭で考え、身体を通して感じた自分自身の答えでした。さらに大事なのは、その答えを見つけるための方法、学び方を手に入れたことです。自分で課題を見つけ、自分で考え、自分で判断し、仲間と協力して解決する、これこそが、予測できない未来を生きる方法です。
本校の創立者である市邨芳樹先生は卒業生を励まして次の言葉を残しています。「底力を養え」と云う題です。「皆さん、自分を忘れてはならぬ。つまり、皆さんの自覚を私は要求するのであります。自己の力を信じ、そして益々これを発揮するやうに私は祈ってゐる。真剣であれ、健実であれ、屈するな、難に耐えよ、粘り強く進め、最後の五分間まで突っ張るだけの勇気あれと私は激励するものである」
卒業は、終わりの時ではありません。むしろ、新しい出発の時です。皆さんが中学の学びの中で見つけた課題はまだ解決されていません。これからの予測できない未来の中で、もっともっと大きな課題が出てくると思います。同じキャンパス内ですが、高校に進めば見える景色は違ってくるでしょう。友達関係も変化します。大きな変化の中で、新たな世界が見つかると思います。そこにはきちんと自分の頭で考える君たちがいて、自分で行動して、困難に打ち克って生きて行ってほしい。皆さんには可能性に充ちた未来が待っていると信じています。