2024年8月23日(金)に中部原子力懇談会様のご協力のもと、「奥飛騨温泉郷 中尾地熱発電所」の見学に行ってきました。
2024年7月23日には、サイエンスアクティビティ2024夏【part1】を開催しました。
中尾地熱発電所は岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷に位置し、再生可能エネルギーである地熱を活用する発電所です。
岐阜県の山奥にあるため、移動には途中休憩を2回はさみ、片道約4時間かかります。
初めに、地熱発電の方法や、中尾地熱発電所のこれまでの経緯などについてのお話を伺います。
地熱発電には、大きく2種類あります。地中から取り出した蒸気で直接タービン(羽根車)を回す「フラッシュ発電方式」と、取り出した蒸気がやや低温の場合に、その熱でアンモニアなどの水より沸点の低い媒体を蒸気に変え、その媒体の蒸気でタービンを回す「バイナリー発電方式」です。
中尾地熱発電所は、中部地区初となるフラッシュ発電方式を採用しています。また、高圧の第2生産井の蒸気を分離したあとの熱水を減圧し、再び蒸気を取り出し、低圧の第1生産井の蒸気と合わせて再利用する「ダブルフラッシュ方式」を採用しています。詳しくは、中尾地熱発電所のホームページを見てください。
地熱資源開発においては、温泉との共生が大きなテーマとなります。奥飛騨温泉郷 新穂高温泉の中尾地区では、約60年前に掘られた8つの井戸を集中管理し、各温泉宿に温泉を供給していました。地熱発電所の建設にあたり、既存8つの井戸のうちの2つを廃止し、新たに地熱発電用の2つの井戸を掘ることになりました。この際、発電に使わなかった熱水は温泉として各温泉宿に無償提供するという条件で、発電所の建設が進みました。結果、発電用の2つの井戸で、元々の温泉の使用量の約8割を賄うことができ、既存の井戸をさらに3つ廃止することが可能となりました。温泉の井戸の維持にはお金がかかるので、各温泉宿側に大きなメリットになりました。このように、お互いにとってWin-Winな関係となり、地域の温泉文化と地熱発電の共存共栄に繋がりました。
次に、発電所の見学に移ります。
内壁一面に防音材が貼られた、タービン・減速機・発電機がある建物の扉を開けると、とても大きな音がします。
復水器から送られて来る温水を冷却する冷却塔の中には、巨大な扇風機が上部に設置されており、吸い込まれそうになるほどの空気の流れを感じることができます。
蒸気生産エリアのフェンスの中にも入らせていただき、第2生産井を目の当たりにします。手を近づけると、熱を感じることができます。
最後に制御室の見学です。この中尾地熱発電所は無人で運用されており、構内のいたるところにカメラが設置され、名古屋から遠隔で制御が可能です。
中尾地熱発電所は2022年12月に運転を開始した、比較的新しい地熱発電所です。職員の方々は、何度も名古屋から片道約4時間かけて訪れ、地域の方々と密にコミュニケーションを取りながら発電所の建設を進め、地熱発電所と温泉文化の共生を実現しました。
地熱という再生可能エネルギーや、地熱発電所と温泉の共生に向けた様々な取り組みなど、大変勉強になりました。中尾地熱発電所のみなさま、中部原子力懇談会のみなさま、ありがとうございました。