12月10日(火)、この日は『人権デー』ということで、朝のショートタイムで全校放送がありました。1948年のこの日、国際連合第3回総会において、全ての人民と全ての国とが達成すべき共通の基準として「世界人権宣言」が採択されました。世界人権宣言は、基本的人権尊重の原則を定めたものであり、人権保障の目標や基準を初めて国際的にうたった画期的なものです。採択日であるこの日は、「人権デー(Human Rights Day)」と定められています。
以下、放送原稿です。↓
本校の正門にはユネスコスクールとして承認されていることを示すプレートが掲げられています。ユネスコスクールには、国連が定める「国際デー」を記念する活動を、毎年少なくとも2回実施することが求められています。今日12月10日は、数ある国際デーの中から、本校が選んだ三つ目の国際デーである「人権デー(「Human Rights Day)」です。この放送は、ユネスコスクールとしての活動として行っています。ユネスコスクールのメンバーである生徒の皆さん、今日はこの放送を通じて「人権」について考えてください。
第二次世界大戦が終わって間もない、昭和23年(1948年)12月10日、国際連合第3回総会において、全ての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、「世界人権宣言」が採択されました。第二次世界大戦では 、戦争のために人々が人間としての尊厳を踏みにじられることが広く行われました。戦場となったヨーロッパや日本を含むアジアでは、兵士だけではなく、非戦闘員である一般の人々も、空襲などにより多くの命が奪われ、肉親を失い、家や財産を焼かれるなどの惨劇に巻き込まれました。敵対国への憎悪が偏見や差別を生み、人権侵害をむしろ推奨するような風潮さえ生まれました。こうした戦争への痛切な反省に基づき、人が人として尊厳をもって生きることができる世界の実現という崇高な理念のもとに、「世界人権宣言」が採択されたのです。
ユネスコスクールの一員である皆さんは、この機会に是非「世界人権宣言」を読んでみてください。国際連合広報センターのホームページに日本語版が掲載されています。見てもらうとわかるのですが、英語で書かれた原文の正確な訳だとは思われますが、日本語としてこなれていないため、内容がなかなか頭に入ってこないかもしれません。そこで、先日亡くなられた詩人の谷川俊太郎さんが翻訳された「わかりやすい谷川俊太郎訳世界人権宣言」をサイバーキャンパスで配信しておきましたので、目を通してください。その第26条には「人はまた教育を通じて、世界中の人とともに平和に生きることを学ばなければなりません。」とあります。ユネスコ憲章前文にある「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」につながっています。
自分の周りを見渡してみてください。そんな大切な人権が損なわれている場面はありませんか? 差別や偏見をもとに人権を侵害されている人はありませんか? よく目を凝らしてみると、守られるべき人権が損なわれていることって、結構あることに気づきませんか? あなた自身の人権は侵害されていませんか? あなた自身が気づかぬうちに誰かの人権を侵害してしまっていたことはありませんか?SNSがいきわたり、誰でも自由に自分の考えや感情を簡単に発信できる社会になっています。そのこと自体は素晴らしいことではありますが、一つ間違えると、他者の人権を侵害する内容を広い範囲に拡散する危険性も伴っています。SNSで鬱憤晴らしに不満をアップするのが癖になっている人はいませんか? その中に個人や団体を特定するような形で悪口を書き込んだりはしていませんか? ネット上に一度上がったものは、完全に削除することはできません。また、ネット上のコミュニケーションは対面に比べニュアンスが伝わりにくく、気づかぬうちに相手を傷つけているかもしれません。くれぐれも他者の人権を侵害しないよう細心の注意を払ってください。
誰しも、自分自身の権利は損なわれたくないものです。では自分の権利を守るためには、どうしたらいいのでしょう? 方法は一つしかないと思います。他者の権利に敏感になり、他者の権利を最大限尊重するように心がけることに尽きると思います。他人の権利が侵害されていることに無関心でいると、権利が侵害される状況は自分自身にも必ず迫ってきます。無関心でいることは、無意識で消極的ではあっても権利の侵害に加担していることと同じです。教室に掲げられている今日の放送のポスターにある「『誰か』のことじゃない」とは、こういった意味です。是非、自分自身を大切にするために、他者の状況に関心を寄せてください。
本校のユネスコスクールとしての活動の柱の一つに、難民支援の取り組みがあります。著しく人権を侵害されている状況下にある難民を支援するのは、この「世界人権宣言」の精神に基づくものです。ユネスコスクールの一員として是非積極的に取り組みに参加してください。「世界人権宣言」が目指す世界の実現に向けて行動しましょう。