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令和4年度入学式を行いました

連日の晴天に恵まれ、9時30より、本校記念体育館にて令和4年度入学式が行われました。

コロナ禍にあって、各家庭1名までの参列に制限せざるを得ず、式後のHRは生徒とは別室で行うという制約の中での入学式でした。

初めて聞く校歌に真剣に耳を傾ける新入生が印象的でした。良い学年になりそうな予感がしました。

 

 

 

 

校長式辞です。

桜の花は満開を過ぎ、柔らかな木々の緑が萌えるこの春の日に、令和4年度名古屋経済大学市邨中学校・高等学校入学式を挙行できますことを心より嬉しく思います。
 本日ここに、中学校77名、高等学校473名の入学を許可するにあたり、これからの3年間あるいは6年間にわたって、互いに敬い、互いに励まし合って、共に夢を追いかける仲間になって欲しいと願います。
 新型コロナウィルス感染症の第6波が今だ収まらず、オミクロン株はしぶとくその勢いを保っています。密集することを避けるために、ご家族の参列を制限せざるを得ませんでした。申し訳なく思います。
 あらためて、新入生の皆さん入学おめでとうございます。そして、この日を心待ちにしておられたご家族の皆様にお祝いと感謝を申し上げます。
 さあ今日からいよいよ始まると、初々しい気持ちで校門をくぐられたと思います。一方では、前の夜に新しい教科書を手にして、分厚いな、字が小さくなったな、大丈夫かなやって行けるかな、という不安な気持ちを抱いた人もいると思います。
 大丈夫です。市邨は優しく包み込んでみんなで共に進んでいく、そんな学校です。安心して一緒に行きましょう。
 「コロナを乗り越えて、新しいいちむらが始まる」と、学校案内のパンフレットで宣言しました。
 市邨高校・中学校は今年で創設116年目を迎えます。そのような長い伝統を受け継ぐ学校が「新しいいちむら」とあえて言うのは、「学校が変わらなければ、日本の未来は危うい」と考えるからです。世界は大きく変わろうとしています。いや、変わってしまっています。新型コロナウィルス感染症のせいだけではありません。百年に一度という規模のこの感染症が、社会や経済にどのような傷跡を残すことになるのか、ましてや10年後の未来がどうなるのか、予測できません。コロナ禍がなくても、ネット社会の進展やAI;人工知能の発展は産業構造の転換をもたらし、新たな職業が生み出され、一方では今ある職業がなくなり、雇用形態や働き方も大きく変わり、これまでとは違うLife-Designが必要になっています。そんな中、冷戦終結後の世界のひずみが一挙に噴出した形でウクライナ戦争が始まりました。これまでの世界の枠組みを壊そうという動きは、核戦争の危機をも孕んで、否応なしに政治や経済や社会構造を一変させようとしています。民主主義や資本主義といった枠組みが変わり、思想や世界観が変わろうとする中で、人々はどのように変わっていくのでしょうか。
 未来を生きる若者たちには、そのような時代の変化の中でも、たくましく生きる力が求められます。

 そのような未来を生きるためのツールは、一つはICT教育で培われる技術です。本校では全校どこでもインターネットに繋がる全校無線LAN環境があり、一人一台のタブレット端末iPadを配布し、最先端アプリを導入して、考える文房具として使っています。それらを活用することで得られるICT能力が未来を生きるツールです。コロナ禍でも、オンラインの授業は当たり前、臨時休校でも学級閉鎖でも学びを止めることはなく、夏休みは短縮せず、全ての学校行事を実施することができたのはICT活用能力のお陰です。
 更に重要な未来を生きるツールは、自ら考える力です。”TeachingからLearningへ”というスローガンは、先生主体の授業から、「生徒を主体とする学び」への転換を進めようという主張です。授業が単なる知識の伝達の場でなく、生徒が自分の頭で考え、自分で気づき理解するという場面を作りたいと考えています。授業では、生徒と生徒が話し合い、先生と生徒が話し合い、自分の考えを全体に伝えるためにどのように表現すればよいかを考える。それが、深い学びに繋がるというのが、新しい学習指導要領で求められる「主体的・対話的で深い学び」です。そのような授業では、正解を求めるのでなく、どのように考えるかに重点を置き、友達の考え方を知り、自分の考えを表現することを狙いとします。
 つまり、生徒に教え込むことは最小にして、生徒の好奇心を刺激し探究心を喚起する授業に変わります。生徒の学びの時間は授業だけではなく、むしろ授業の外で学びは発展します。先生は生徒に寄り添い、一人ひとりに最適な学びを実現するために、授業時間を減らします。大切なのは、生徒の中に自然に湧きおこる好奇心を授業の内と外でいかに成長させるかです。
 高校での新しい授業がどのように展開されるかを少しお話ししましょう。本校の中学校ではすでに学校が設定する教科「未来」の中で形を変えて取り組まれていることです。そこでは、タブレット端末が駆使されています。
 まず、 Global Competence Programでは、「自分とは何か」を考え、自分を発見し、他者を尊重する「心を育てる」。この授業は、native のfacilitatorによってAll English で行われます。言語力を鍛え、論理的な思考を育てる「言語力・論理力」の時間では「言葉を育て」ます。そして「言葉があなたを作ります」。また、全ての授業で探究に繋がる活動を展開します。授業はどのコースも3時に終わります。そこからが自分の勉強です。放課後の学びと呼んでいます。通称「学びカフェ」です。 授業中に分からなかったことやもっと深めたいことに自分で取り組む「スタディカフェ」、先生が問題提起して生徒が集う「市っちゃんカフェ」、外部の指導を受けて、(一例として、AIが課題をプログラムするatama+を使う講座もある)じっくり学習に取り組む「じっくりカフェ」、社会人講師を招いてSDGsなどに取り組む「ウェルカムカフェ」など、自分が動いて、自分の学びを創る時間です。もちろん、この時間を利用して部活動に参加することもできます。この時間をどう過ごすかで3年間の君たちの成長が決まるといっても過言ではありません。このような多様な学びを支えるのが、「まなびサポーター」と呼ばれる先生方です。自分の学習について相談したり、悩みを相談することもできます。クラス担任とは別です。自分で自分の先生を選びます。これらの新しい取り組みは、すべて「生徒が主体となって、自ら考え、自ら行動する力を養う」という教育目標を具現化するものです。 
 新入生の皆さんにとって、これまで、学習=勉強とは、学校であれ塾であれ、先生がいて、先生の言うこと、あるいは教科書に書いてあることを出来るだけたくさん覚えることだったのではないでしょうか。なぜそうなるのかと考えるより、そうなっていることを覚えることが勉強だと思っていませんか。「正しい」と先生が言うことを、つまり正解を覚えることが勉強であると思っていませんか。覚えた知識の量が学力であると思っていませんか。試験とは、その覚えた正解をはき出して学力を測ることで、その試験対策が勉強だというイメージがありませんか。そういう学力は今の社会でも既に通用しません。ましてや、曲がり角を曲がってしまった新しい世界では通用しない力です。
 今まで見たことの無い、正解のない課題を解決する力となるのは、自ら考える力です。学びのきっかけは様々な経験や体験です。社会や自然の様々な現象に興味を持ち、好奇心が湧いてきて、知りたい、わかりたいという学びの原動力が湧いてきます。学ぼうとする意欲、自分で考えようとする力、学ぶ方法、そしてひらめき、その全てが合わさって、まだ見ぬ課題を見つけ、解決する力になる、それが学力です。 私たちは、将来にわたって、学び続けることが必要です。本学園の創設者である市邨芳樹先生はこのことを「終身教育」と呼びました。終身、つまり生きている限り勉強せよ、と言ったのです。百年も前にです。本校の建学の精神の一つの柱となっています。
 市邨先生は、次のように述べています。
 「人の尊きは実に其の「人」たるに在り。富貴や栄爵や知識や才覚や其有無は必ずしも直ちに人たるの価値を増減するものにあらず。自ら人たるの尊きを意識して始めて他人の人格を尊重するに至る」と。「人が尊いのは、実にその「人」であることにある。財力や名声や地位、知識や才能、それらの多少や有無が必ずしもそのまま人である価値を増減させるものではない。人である自分自身の尊さを意識して初めて他人の人格を尊重することができる」、と言っています。人は人であることで、それだけで尊いのだという、先生の教えは、本校の建学の精神である、「一に人物、二に伎倆」の大本にある理念です。学力よりも、能力よりもそのもとにある人としての気高さを高めようとしたのです。現代のSDGs(持続可能な開発目標)の理念に通じるものがあります。
 新入生の皆さん、学校は学ぶところです。授業で学び、部活動で学び、学校行事で学びます。そして、本校には、放課後の学びがあります。つらいことも多いし、悔しいこともある、仲間のことで悩み、自分の人生のことで悩み、くじけそうになる。でも、友と一緒に学ぶことで、やがて楽しくなるところです。本校での新しい学びの中で、新しい自分を見つけ、人として成長してください。君達が、自分の力を信じ、自らの未来を切り拓いていくことを祈念して、式辞といたします。

令和四年四月七日                  学校長 澁谷有人

校舎の外では、「SDGsボランティア有志」のメンバーが、「ウクライナ難民支援」の活動をしていました。御協力ありがとうございます。
この記事の筆者
校長 澁谷有人
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