PICK UP

令和4年度修了式を行いました

今年度の締めくくりの式を行いました。

桜が開花しはじめたグランドでの修了式は初めてのことです。

ポカポカした春の陽気の中、長い式辞を述べました。

以下、校長式辞。

おはようございます。

修了式の日に、このように桜が開花し、すでに満開に近いというのは、春が来たという喜びを感じます。でも、これからもこのように早い春の訪れがあり得るかもと云う点では、地球温暖化について憂うべきことなのかもしれません。

 一年の最後になってこのように全校生徒が一堂に会することができたのは、本当に嬉しいことです。避難訓練以来ですね。市邨生として同じ場所で同じ時を過ごしているという実感が嬉しいことです。

 来年からは、皆さんに加えて、高校の新入生525名、中学校の新入生81名が全市邨生ということになります。市邨の教育を指示してくれる人が増えていることに感謝します。

 

 皆さんが、今日、この修了式に出席できているということは、昨日、カナダ語学研修に出発した13名と選抜大会に出発したテニス部の選手たちを含めて、出席者全員がこの1年間の学習の成果と努力が認められ、次の学年に進級することを認められたということです。おめでとうございます。

 成績が5段階評価でつけられていますが、評価とは、現在あるいは過去の、努力や成長の結果を測る物差しにすぎないのであって、肝腎なことはそこから自分のこれから進むべき方向性を見つけることです。

評価が低いからといってダメなのではありません。誰が自分のことをどう評価しようと、究極は自分自身がどう評価するかであす。自分の中になにくそ、という気持ちがあって、こんなものが自分の力ではないと思うのであれば、もらった低い評価を励みにすればいい。こんなものかなと思うのであれば、冷静にこれからの取り組み方を考えれば良い。大事なことは未来にあるのです。

 市邨芳樹先生は100年前に「学生の勉学は単に試験の為にあらず、智を磨き徳を修むるを楽しむに至りて、最も善く修学の目的を達するを得べし」と言いました。学びの目的は人としての品格を高めるために有り、学ぶことが楽しいと感じる境地に達してほしいと願っていました。

 

 未来はますます不確かになっています。コロナ禍やウクライナ戦争によってますます時代は混沌としています。誰も2030年の未来を確実に予想することはできません。たった7年後の未来です。対話型AIのChatGPTに聞いてもいい加減な答えしか返ってきません。いや確実なのは、やがて人間は考えることを止め、代わってAIが判断するようになるだろうということです。一部の世界ではすでに始まっています。例えば、自動運転の技術です。私は、AIが取って代わることができないのは未来のどの部分だろうかということに大いに関心があります。

 

 先日のExhibition Day / Open Day は私にとって素晴らしい発見となりました。そこで見られた発表者の自信に満ちた声や仕草、それを聞く人たちの真剣で暖かい眼差しは感動的でさえありました。ひとり一人が見つけたテーマそのものが個性的で独自性がありました。まじめで核心を突く質問、その質問に自信を持って答える発表者、それを可能にしたのは発表したこと以上のデータの裏付けを持っていたからでした。生徒の皆さんと教師のこの1年間の成長を感じることができました。市邨の探究型の学び、市邨メソッドは確実に発展しつつあると確信しました。

 この1年間、市邨はこれまで数年間かかって新しい取り組みを積み上げてきました。それは、現2年生も同じです。新しい取り組みを土台にして、一気に新しい教育の形を展開してきました。四つの新しいコース、授業時間の削減、放課後の学びカフェ、学びサポーター、Global Competence Program、言語力・論理力、インターンシップ、SDGsとユネスコスクール、これらは全て、Student-Centered  Learning つまり生徒を主語にする学びによって可能になるものであり、また生徒を主体とする学びを実現するための方法、手段でもありました。そこには、生徒の底力と生徒の学ぼうとする意欲を信じて、可能性を無限に引き出そうという壮大な目標があるのです。

 AIではなく、若者が未来を切り拓くことは可能か、その答えは、市邨精神にあると私は信じています。  

 

 市邨での学びは、市邨芳樹先生のいう「桜は桜、松は松たれ。各自の天禀に適応し、精励以て特色を発揚し、而して無名の英雄たるに甘んぜよ。」という一節に込められています。市邨での学びは「自分の特性を如何なく発揮し、自分だけが知るかけがえのない努力」そのものだったと言えると思います。その価値はあなた方自身が最もよく分かっているところです。

 先週の中学の卒業式で私は、宮沢賢治について話をしました。宮沢賢治に力をもらって教員になった私は、教員生活最後の学校で市邨芳樹先生に出会い、自分の教員としての原点に再び出会うことができました。それは、市邨先生の言葉で言えば、犠牲的精神、通常、犠牲という言葉はネガティブに使われますが、市邨先生の云う犠牲的精神はそうではなくポジティブなものです。

 市邨精神の大きな柱である、犠牲的精神について、市邨芳樹先生は、「犠牲的精神を以て天職を尽くすと云うこと」がいかに大事かを卒業式のたびに生徒たちに話したといいます。「人生の進むべき道というのは、人の為に尽くすということにある、それがどうしようもなく仕方がないからするのでなく、自ら楽しんで人の為に尽くすことが肝心である」と教えたのです。人の道は犠牲的精神にこそある、見返りを求めず、自ら楽しんで人の為に自分を投げ出そうではないかと呼びかけたのです。

 その心は、賢治さんの残した「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉に込められた思いと同じだと痛切に感じました。

 二人の思いは、世界や宇宙にまで及んで気宇壮大なものですが、私の考える犠牲的精神は、人がなんのために生きるか、または、なんのために働くかという点にあります。それは、人が働くのは、一つには自分が生きる糧を稼ぐためですが、自分が生きるためにどう働いてもいいというのではなく、人のために働く、自分も含めて、人がぜんたい幸せになるために働くのだと考えています。これは市邨先生が、商業者がものを売るのは、自分のもうけのためでなく、第1に買う人の利便のためである、そうすれば自ずと自分にも利が回ってくると教えたことに通じます。人の幸いのための商業活動なのです。経済と道徳は同一でなければならぬという意味です。そういう意味で、先生たちは生徒の幸せのために働くのです。

 困難な社会にあって、本校の学校としての使命は、”それぞれの個性を磨き、能力を伸長し、人のために尽くす人物を育成する” ことにあると思っています。

 生徒の皆さんが、それぞれの自分の個性を磨き成長し、そしてそれは、周りの人のしあわせ、人類の幸福のために生きるのだと云うことを肝に銘じていただくよう願っています。

 

 私は、この3月で市邨を去りますが、市邨精神を学んだことを終生の誇りに思い、市邨先生の云う「終身教育」を全うしようと思います。12年間にわたり、市邨精神と共にあったことは望外の幸せでした。本当に楽しい12年間でした。

 生徒や教職員やすべての関係者の方々と力を合わせて、市邨の教育改革を進めることができたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

 春休み中にも部活動や学習に学校に来て、活動すると思いますが、皆さんが次に全員で集まるのは、4月5日の始業式の日です。それまで、学習を休まないように、新学年に向けて準備をしてください。

 皆さんのこれからの活躍を楽しみにしています。

この記事の筆者
校長 澁谷有人
筆者の他の記事を読む
いちむらTOPICS学校行事校長ブログ
令和4年度  修了式
Prev
令和4年度 修了式2023年3月20日
令和4年度 愛知県スポーツ協会 表彰式2023年3月18日
令和4年度  愛知県スポーツ協会  表彰式
Next

いちむら TOPICS

バドミントン部から2名U16日本代表に選出!!

バドミントン部から2名U16日本代表に選出!!

【高校】入学前学習会②

【高校】入学前学習会②

【市邨ゼミ】高2・高3ゼミレポート⑰

【市邨ゼミ】高2・高3ゼミレポート⑰

最新記事

バドミントン部から2名U16日本代表に選出!!

バドミントン部から2名U16日本代表に選出!!

【高校】入学前学習会②

【高校】入学前学習会②

【市邨ゼミ】高2・高3ゼミレポート⑰

【市邨ゼミ】高2・高3ゼミレポート⑰

キーワード

いちむらTOPICS 529学校行事 210アクティブラーニング 200部活動 190体験活動 136見学会・説明会 136探究活動 133ICT関連、SDGs、探究活動、アクティブラーニング 122国際理解教育 91SDGs 85ユネスコ・スクール 85中学校の取り組み 76国際支援 73難民支援 73ICT関連 71放課後の学び 61国連UNHCR 60協働活動 58パートナーシップ 53ユネスコスクール 50未来の学び 49女子ハンドボール部 46アカデミックコースの取り組み 45総合探究 45市邨ゼミ 40国際理解 37ICT関連、SDGs、探究活動 36体操部 35軽音楽部 32理科教育 25陸上競技部 24iPad 22カナダ語学研修 21修学旅行 21男子テニス部 21生徒会活動 20#インターアクトクラブ 18卒業生の活躍 18#探究 16ワンゲル部 15#iPad 14UNRWA 13女子テニス部 13未来の語り場 13語学研修 13ニュージーランド 12文化祭 12Creativity 10EDUーPORT 10教員向け勉強会 10UNHCR 9カンボジア支援 9社会科 9社会科ツアー 9野村勇斗 9エクスプローラーコース 8ダンス部 8ブライトコース 8ミライノカタリバ 8英語教育 8#現代社会 7eスポーツ 7バドミントン部 7ユネスコ活動 7硬式野球部 7フェアトレード 6貧困支援 6防災教育 6School YouTube 5キャリアデザインコース 5ユネスコゼミ 5吹奏楽部 5瀬戸SOLAN小学校交流 5eスポーツ部 4UNESCO Associated Schools Project Network 4ウクライナ 4バトン部 4プロジェクト学習 4国境なき医師団 4女子サッカー部 4教員研修 4服のチカラプロジェクト 4SDGs有志 3インターアクト 3インターンシップ 3スキー 3スキー部 3ゼミ 3ボランティア 3台湾 3国語 3国連 3美術部 3金融教育 3#理科 2Exhibition Day 2Open Day 2ウクライナ避難民支援 2パレスチナ 2パレスチナ支援 2ボランティアアワード 2ユニクロ服のチカラプロジェクト 2ユネスコ 2ユネスコ委員会 2入学前学習会 2写真部 2国際支援活動 2平和活動 2広報活動 2弓道部 2手芸部 2放送部 2文部科学省EDUーPORT 2書道部 2校長ブログ 2職員研修 2高校生 2高校生ボランティア 2高校生国際支援 2#インターアクト 1#実験 1#市っちゃんカフェ 1#放射線 1Community 1Creative Learning 1Education for International Understanding 1Explorer 1Ichimuraゼミ 1inquiry 1JICA 1PTA活動 1SAJ検定 1SDGs探究部 1SDGs有志活動 1Student Ambassador 1Student Centered Learning 1trivalogy 1Use ICT in Education@Ichimura 1いちむらゼミ 1いちむらブログ 1ウクライナ支援 1ウクライナ避難民緊急支援 1エシカル 1エシカル消費者 1オリンピック 1ぐらぐら2 1コース別活動日 1サイエンスキャンプ 1サスティナブル 1サスティナブルブランド国際会議 1シリア 1トーチトワリング部 1トルコ 1ファシリテーション 1ボランティア活動 1マイクロプラスチック 1中学1年生 1中学2年生 1主体的な学び 1主権者教育 1体育 1出張授業 1制服 1剣道 1募金活動 1募金活動中 1卒業生 1卓球部 1協働国際支援 1合同活動成果報告会 1合唱部 1名古屋大学 1名古屋経済大学市邨高校 1問いづくり 1国連支援 1国際平和 1地球市民 1地球市民教育 1基礎スキー 1女子バスケットボール部 1学びカフェ 1家庭科 1市邨学園 1市邨芳樹 1市邨高校 1市邨高校SDGs 1市邨高校難民支援の夕べ 1平和交流 1平和学習 1平和教育 1広島県立尾道商業高等学校 1情報 1情報処理部 1授業後の学び 1探求活動 1文芸同好会 1文部科学省 1有志活動 1服のチカラ 1校外芸術鑑賞会 1演劇部 1漫画研究部 1生徒主体 1生成AI 1社会とつながる 1科学研究部 1緊急支援 1自然体験学習 1防災体験 1陸上 1難民 1難民映画祭 1韓国 1高校生ボランティア・アワード2023 1高校生探究活動 1