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令和3年度2学期終業式を行いました

寒い朝でしたが、晴天に恵まれ、風もなく、晴れ晴れとした気持ちで2学期を締めくくることができました。高校生中学生合わせた全生徒がグランドに集合したのは久しぶりのことです。元気に参集できたことに感謝します。

冒頭で、愛知県私学協会優秀生徒として生徒会長吉田晴が表彰されたこと、市邨の男子生徒が登校途中に、体調不良で倒れた方の介抱をし救急車を手配してくれたとして感謝の電話があったことを紹介しました。

校長式辞は次のとおり。

おはようございます。

 もうすぐ2021年が終わります。あっという間の2学期でした。新型コロナに脅かされ続けた毎日だったと思います。

 昨日は、冬至でしたが、知っていますか。1年で最も昼間が短い日です。今日からは一日一日昼が長くなってきます。今太陽があの高さですが、きのうの同じ時刻にはもっと低かったのです。これから日が経つにつれ太陽は高くなります。なぜそうなるのか、説明できますか。中学の理科で習います。気になったら調べましょう、それが知識を獲得して自分の力にする大事な方法です。冬至が来ると、私は、地球が宇宙の中で動いているんだなあと感じます。太陽の周りを地軸を傾けた地球が回っているんですが、その楕円軌道のある特別な点を通過したことが、地球の表面に住んでいる我々には、北半球ですが、昼が最も短いということになります。夕方になって、真っ赤な太陽が沈んでいくとき、ああ、地球は自転しているんだなあって思います。でも、私がコペルニクスより前の時代の人間だったなら、太陽が地面に潜っていくと思ったでしょう。昔の人も私たちも、見ている事実は同じですが、先人たちの思考の積み重ねおかげで、本当の意味を理解することができている。思考を積み重ねることで、正しい理解に到達することができるんですね。その上に立って現代人は宇宙に飛び出すことができる。宇宙に飛び出すための基礎知識が備わっているんです。

 いまみんなが学習によって身に付けようとしている知識の蓄積が未来の人間を作るのです。その知識は単なる記憶ではなく、自らの体験によって実感したことと結びついて、考える、思考するというプロセスの中で、新たな気づきが生まれて、新たな世界が開けます。

 その大元には、なぜ冬至なんて日があるんだろうと不思議に思うような好奇心が必要ですね。

 

 さて、今年は澁澤栄一という人物が話題になりました。大河ドラマの主人公でもあるし、2024年から流通することになっている新一万円札の肖像画に使われることになっています。幕末から、明治大正昭和にかけて活躍し、「日本の資本主義の父」といわれています。初めての株式会社を作り、銀行を作り、鉄道会社、ガス会社、電力会社、運輸会社、保険会社、それから、紡績会社、あの富岡製糸所も設立しました。彼が、実業界を引退するとき、500以上民間会社の社長であって、赤十字社など600以上の社会公共事業に関わっていたそうです。

 教育にも力を入れました。一橋大学、東京経済大学それから女子教育のために日本女子大学の設立に関わり、商業教育に力を入れました。そのときに協力したのが矢野二郎という我が市邨学園の創設者である市邨芳樹先生の恩師だったんです。ですから、市邨先生は、渋沢栄一にとって弟子筋になります。それで、市邨先生が校長を務めた名古屋商業学校の30周年記念式典や市邨先生の祝賀会などに駆け付けて講話をしたり、銅像の題辞を書いてくれたりしました。

 大事なことは、その「日本の資本主義の父」たる渋沢栄一氏と、市邨芳樹先生の経済に対する考えが同じであることです。ふたりは、「経済と道徳は同じものである」といいました。

 「道徳経済合一説」を主張し、「富をなす根源は何かと言えば、仁義道徳。」、「正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。」と渋沢氏は言い、市邨先生は、「道徳経済畢竟一なり」、「商業は社会奉仕なり、需要者に対する責任感を持て」、「誠実であれ」といいました。本校の校歌の2番の歌詞に「清(すが)しき富を築かんと」という一節があります。他の学校の校歌の中に、富のために努めよという言葉があるのを私は知りませんが、商業とは清しい、つまり正しい道理の富を築くことだと堂々と言っているのです。すごいですよね、正義を貫く商売をしろ、金儲けの為でなく、人の為に商売することが金儲けに繋がるといったんです。これが日本の資本主義の大本であったわけです。なのに、なぜ日本は幾多の戦争に至ったのか、そして戦後見事に復興し、世界第2の経済大国になったのに、なぜ現在はグローバリズムの波にアップアップし、情報社会デジタル化に後れを取って成長なき社会になっているのか。大いに歴史に学ばなければならないと思います。

 

 市邨では皆さんは、記憶力中心の学習から、考えること、表現することが中心の学習に変わろうとしています。この動きは、日本中で始まっています。知識をたくさん記憶することで、大学入試を突破しても、それが、社会に出て役に立つ学力ではないことは、はっきりしているのです。そんな学びでは人は作れない。来年から始まる高等学校の新しい学習指導要領では、はっきりと学びを変えると言っています。評価方法も変わります。本校はすでに変わろうとしていますが、変わらない学校、変わろうとしない学校もたくさんあります。そのような学校がまだまだ多くあることに、私は危機感を覚えます。若者の未来のために学びの価値観を変える必要がある、つまり、記憶することが学習ではなく、考えることが学習であるというのに、旧い価値観が壊れずに続いていけば、若者の未来を拓くことはできないと思うからです。

 市邨の生徒たちは、SDGsをテーマに、探究活動をし、ゴミやプラスチック問題に関わり、難民を支援したり、カンボジアにマスクを贈ったりした活動の中で、自分自身で考え、工夫し、方針を決め、人前で自分の考えを話すという、今までになかった学びをしました。文化祭では、オンラインで課題を提起し、解決策を発表しました。その学びを支えるツールとしてiPadがあります。新しい年を迎えようとしている今、希望はそこにあると思います。

 

 明日から、冬休みです。大晦日から元旦、初日の出に初詣、まだまだ続くコロナ禍の正月はどんな「新しい生活様式」の正月になるのでしょうか。日本古来の伝統的文化的な行事が失われるとは思えません。昔から続く正月行事の意味を改めて考えてください。家族と過ごす一日の中で、自分とは何かを考えてください。そして、一冊でも多く本を読んでください。

 高校3年生は進路希望の実現に向けて時間を惜しんで勉強してください。既に、進路が決定した人にとってもこれがゴールではありません。新しい進路に向けて進むには、この3ヶ月間は最も貴重なときです。入試のためではなく、自分のための勉強を始めてください。

 

 最後に、オミクロン株の市中感染が起きたようです。夏休み明けのような感染状況が起きないよう再び警戒心を奮い起こさなければなりません。油断することなく対処しましょう。

 では、いい年をお迎えください。新年、元気に会いましょう。

この記事の筆者
校長 澁谷有人
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